外は大雨。目の前にはキャンドルがひとつ。小さなあかりが隙間風に煽られている。
停電の夜に俺は朋紀とふたりっきり。
――――――ああ、こうやって二人でゆっくり過ごすのは何年ぶりだろう。
俺は大学を卒業して、親父の会社を継いで、年中世界を飛び回っているものだから日本にいること自体が珍しい。
だが、今日から四日間は何年かぶりの休日を満喫できる。
ところが実家に帰ってみても仕事以外にすることもない。久々に昔歩いた街をブラブラ歩いてみたが、これといって興味をそそられるものもないし、喧騒が耳障りだったため、早々に引き上げようかと思案していたところだった。
「幸成!?」
名前を呼ばれ振り返ると雑踏の中から懐かしい顔が現れた。
――――――朋紀。
ガキの頃からの悪友だった朋紀。人懐こい笑顔は相変わらず。普段からスーツしか着ない俺とは違って、流行のファッションに身を包んでいた。軽薄そうな外見のせいか、オフを満喫するホストみたいに見える。
「幸成……お前、こっちに帰ってたのか?!」
「ああ、昨日帰ってきた」
「だったら連絡くらい寄越せよ!ケータイの番号、教えてあっただろ?」
「あれから変わってないのか?」
「あたり前だろ。いつ幸成からかかってくるか分からねぇんだからよ」
五年も変えてなかったのか。あ、今は機種を変えても番号はそのまま使えたっけか?
「……元気そうだな」
「お前も。まだミュージシャン志望のフリーターか?」
「ワリーかよ。夢追ってちゃ」
「別に」
当たり障りのない会話。でも少しぎこちない。
そりゃ、そうだろ。……昔の恋人なんだから。
「なあ、幸成。せっかくこっちに帰ってきたんならさ、お前ン家の別荘に行こうぜ!」
「はあ?なんだよ、急に」
「ほら、あのオシャレな洋風の別荘だよ!ガキの頃にお前の親父さんに連れられてよく遊びに行ったところ!ここからだと特急乗ってそんなにかからなかっただろ?旅費は俺が持つから、な?」
「お前な……そんな急に……」